子どもの気持ちを受け止めていますか。

平成12年6月15日  湯田保育所にて  講師:菅原晃子先生

 子育ての期間は人生の中で以外と短いのでゆったり楽しんで子育てをして下さい。
 お母さんの質問でよく聞かれる事のひとつに、オネショがあります。
子どもの排尿、排泄をつかさどる筋肉の発達は、極めて個人差があります。
ここで大事な事は,排尿の失敗を恥ずかしいという感じを、子どもに持たすような対応をしてはいけないということです。
そのためにはまずお母さんが、子どもの排尿の失敗を、まずい事、恥ずかしい事と思わないことです。
もし、今までそう思っておられるお母さんがいたら、今日を機会に意識的に変えてください。
 子どもが何か失敗した時ほど親子の心の掛け橋を作るチャンスだと思ってください。
子どもがまずい事をした時、これは良いチャンスだと思って、子どもの心に届く対応をして下さい。「親業の実例」をひとつ紹介します。
お布団にオシッコしちゃったよ。(奈良県 24歳主婦)
 夜の11時を少し過ぎた頃のことです。私は主人の遅い夕食に付き合って食堂で主人と取りとめない話をしていました。その時に2階から3歳のあかりが泣き声で私を呼びました。
 あかり 「ママ」
     「はいよ。今行くよ。ママは下だよ」
でもどうしたのかしら。8時過ぎに絵本を読んであげて安心して眠ったはずだったのですが、悪い夢でも見てうなされたのかなと思いました。
 あかり 「ママ」
     「はいはい。どうしたの」
急いで2階の寝室へ行って、私はあかりに聞きました。
 あかり 「オシッコでちゃった。ママのお布団にオシッコしちゃった。」
     「そう、オシッコしちゃったんだ。ママのお布団にオシッコしちゃったんだね。どうしようと困っているんだね。大丈夫だよ。ママ、すぐ直してあけるからね」
私がこう言うとあかりはピタリと泣き止みました。ぬれたパジャマと下着を着替えるために私はあかりを下へ連れて行きました。
 あかり 「パジャマ、オシッコでぬれちゃった」
     「寝る前に、お水たくさん飲んだからオシッコ出ちゃったんだね」
お母さんがそう言うと、あかりは「うん」と言って着替えをしてトイレに行って予備の布団を敷いてあかりはねました。手を握りながらしばらくお話をしてあげると、やがてあかりは、スヤスヤとかわいい寝息をたて始めました。オネショは後始末が大変です。それに癖にもなるしと、いままでの私でしたら、叱りつけていたところです。でも、オネショをして一番辛くて、悲しい思いをしているのは、本人のあかりだと気がついてから、叱る事をやめました。夜、寝る前にたくさんお水を飲むとオシッコが出るということを3歳のあかりはよく分かったのだと思います。それから、自分で注意するようになりました。


 子どもが「お母さん、オシッコしちゃった」と言ってきた時、「オシッコしちゃったんだね。どうしようかとこまっているんだね。お母さんがお布団なおしてあげるからね」と、子どもの気持ちをお母さんがくみ取って言葉にして返す事が大事です。
思っているだけでは、子どもにはこちらの気持ちはわかりません。必ず言葉にして子どもに返してください。
「お母さんは、わかっているよ。今あなたの思っていること、わかっているからね」そして、その次に「お母さんは、こうするよ」、「お母さんは、こう思うよ」とお母さんの思っていることを後で言ってあげてください。子どもの気持ちを言葉で言ってあげることで、子どもがいくら幼くても子ども自身で自分の気持ちに気付く事が出きるのです。大人でも、子どもでも、自分の今思っていること、感じている事に自分で気が付くということが大事なのです。
子どもが自分自身で自分の気持ちに気付くお手伝いをお母さんがしてあげてください。
子どもは、お母さんが自分の事をわかってくれたと気付くと、とても安心します。
そして、お母さんは、「寝る前にお水をたくさん飲んだからオシッコがでちゃったんだね」と事実だけをつたえればいいのです。その事は良い事だとか、悪い事だとか評価をつけくわえてはいけない。
後で子どもにどうすればいいか、解決策を考えさせるのです。お母さんが事実だけを伝え、その時の気持ちを子どもに気付かせる手伝いをし、子ども自身が、これから自分はどうすれば良いか、自分で決める。これが自立だと思います。
 子どもにばかり自立と言っていますが、実は、大人も自立していないのです。
大人は子どもによって自立をさせてもらっていると考え、子どもと共に自分自身も自立していくのです。

より人間らしくいきる力とは、どんなものでしょうか。

1.人間に対する信頼感と、自分に対する自己肯定感
 お母さんは私の見方なんだと感じ、人を信頼できる信頼感
自分は失敗しても、お母さんはわかってくれている。かわいがってくれるんだと感じ、
こんな自分でも生きていても大丈夫なんだと感じる自己肯定感
2.自己決定能力(自立心)
 自分の事は自分で決めて実行しようとする能力
3.よりよい人間関係を持てる力(思いやりの心と自己表現の力)
 他人に対する思いやりの心と、相手を攻撃しないで自分の気持ちを相手に伝わるように自己表現できる力

 このような事ができるようになるにつれ、人との付き合い方が上手になっていくのです。
他人に対する信頼感が失われると、大人でも子どもでも、とても弱い人間になってしまい、とんでもない事をしでかす可能性をもっています。信頼感を持っている人間はとても強いのです。
つまり、自分でブレーキのきく人間になれるのです。

親は、いろんな人の助けを得ながら子どもを育てる。そして、子どもは、見守っていかないといけないが、
手だし、口出しをしない。決定権は常に子どもにあるのだと言うことを忘れないで下さい。